東京四谷総鎮守│須賀神社

新着情報

須賀神社行事予定・お知らせ

三十六歌仙絵ご紹介(第2回)

皆様、いかがお過ごしでございましょうか。

コロナウィルスの影響非常事態宣言も解除となり、少しづつ日常へと戻りつつありますが、須賀神社のある東京、新宿区は依然として感染者がで続けている模様です。
三十六歌仙絵巻ご紹介、第2回となる今回は、柿本人麿の句をご紹介いたします。

【作者】柿本人麿(かきのもとのひとまろ)
 生没年未詳。
 万葉集の第一の歌人と言われており、また、三十六歌仙の一人として有名でもあります。持統・文武両天皇に仕えたとされていますが、天智天皇に仕えた宮女の死を悼む挽歌が見つかっているため、近江朝にも出仕していたとする説もある歌人です。長歌の形式を完成するとともに、短歌も数多く残しており、後の世から歌聖として崇められております。

【掲載されている歌】
ほのぼのと明石の浦の朝霧に
島がくれ行く舟をしぞ思ふ

– 古今和歌集 巻第九 羇旅歌 –

 古今和歌集では題知らず、読み人知らずとなっておりますが、左注に「このうた、ある人のいはく、柿本の人麿がうたなり」とあることから、柿本人麿の作と伝わっている歌です。
 ほのぼのと明け行く明石の浦の朝霧の中をぼっとかすみ、やがて遠くなり消えてゆく舟に、危険の多い航路、旅に伴う不安を想いやり無事を祈る作者の心を詠んでいます。

 ●これは昔のよき歌なり(藤原公任・新撰髄脳)。
 ●上品上。これは言葉妙にして余りの心さへあるなり(藤原公任・和歌九品)。
 ●柿本朝臣人麿の歌なり。この歌、上古、中古、末代まで相かなへる歌なり(藤原俊成・古来風躰抄)。
 後の評価も上記のように高く、柿本人麿の代表作と言われておりますが、実際にこの作品が柿本人麻呂の代表作品と認定されたのは、没後、およそ、二百五十年以上の後の『古今和歌集』に載ってからであるため、今日でも作者の議論があったりと言われ多き歌でもあります。
 この絵巻では柿本人麻呂の作とした流れを汲み、描かれているものです。
 朝霧の中にある明石の浦の情景と、船旅に伴う不安や無事を想う心のコントラストが映える美しい作品であると思います。この短い言葉中に、これだけの情景や想いが込められるのはやはり歌聖と言われる所以でしょうか。

次回は紀貫之の作品をご紹介します。
この絵巻は須賀神社本殿の拝殿に飾られています。
皆様、是非絵巻とともに和歌もご堪能ください。