東京四谷総鎮守│須賀神社

新着情報

須賀神社行事予定・お知らせ

三十六歌仙絵ご紹介(第4回)

先月は例年にない長雨となった梅雨でしたが、それをも懐かしむほどの猛暑が続いております。
皆さまは健やかにお過ごしでしょうか。
境内は蝉の鳴き声がただひたすらに染み入る様子でございます。

三十六歌仙絵巻ご紹介、第4回となる今回は、凡河内躬恒の句をご紹介いたします。

【作者】凡河内躬恒 (おおしこうちのみつね)
生没年未詳(貞観元年(859年)? – 延長3年(925年)?)

 凡河内躬恒は、平安時代前期の宇多朝から醍醐朝に仕えた官人・歌人です。甲斐、丹波、淡路、和泉などの地方官を歴任しました。歌人としては、賀歌に優れ多くの屏風歌に請われました。また歌合での活躍の実績から古今集の撰者を任ぜられ、同じく撰者であった紀貫之(前出)に次ぐ60首が撰出されました。また貫之とは深い友情があったと言われております。「小倉百人一首」にも和歌が収録されています。

 

【掲載されている歌】
住の江の
松を秋風 吹くからに
こゑちそふる
おきつ白波

– 古今和歌集 巻第七 賀歌360 –

 

住之江の松に秋風が吹くと、その傍から沖の白波の音が添えられる。
●「此の如きさはやかなる調しらべは貫之にもなし。誠に古今の一人なり。」(香川景樹『桂の下枝』)
●「此うた六帖には素性とあれど歌ざま必躬恒にてしかも家集家隆卿の本にもいちじるき也」(賀茂真淵「古今和歌集打聴」)

 叙情あふれる知的な世界は、紀貫之とまた違った素晴らしさで他に類を見ないと評されています。この歌は庇護を授かっていた藤原定国の四十歳の祝いの際に、長寿を賀ぐ屏風画に添えられた歌です。そのため読み人が明記されていませんでしたが、後に調査され躬恒の作として編纂されました。

 岸辺の松に吹き付けた秋風が、すぐさま沖の波まで泡立てる風景に、この歌を捧げた人物の影響力と繁栄の様を表しています。沓冠(※)が折り込まれるなど大変技量の高い歌で、「そふる」をはじめ年齢を重ねることに対する祝いの言葉が幾重にも施されています。

 この住之江の松と風、波というモチーフは後に多くの派生歌を生み出し、人生の様々な出来事やその心情を表す表現に用いられました。古今和歌集にも多くの歌で使われています。

※くつかぶり…十文字ある言葉を、和歌の各の上下に置いて詠む技法。それぞれの句の頭文字を、一文字ずつ、末尾の文字を一文字ずつで成立する。この歌の場合は すまふこお/のぜにるみ から、「見る偽の住まふ子お」となります。

次回は伊勢の作品をご紹介します。
この絵巻は須賀神社本殿の拝殿に飾られています。
皆様、是非絵巻とともに和歌もご堪能ください。