東京四谷総鎮守│須賀神社

三十六歌仙繪

三十六歌仙繪

三十六歌仙繪

さんじゅうろっかせんえ

天保七年に画かれたこの三十六歌仙は戦時中、御内陣金庫の中に納められていたために災火を免がれ、現在当社の社宝として残っています。三十六歌仙繪は、それぞれの歌人の肖像画に代表作一首を書き添えたもので、鎌倉時代から江戸時代にかけて隆盛を見ました。

画工は四谷南蘋(なんびん)と称された高芙蓉の高弟、大岡雲峰(当時七十三歳)(天保七年)の作、文晃時代の画家で歌は千種有功郷の書であります。

千種有功郷は千々酒舎と号し、正三位 中納言で、和歌は藤原忠良、有栖川熾仁親王、久世通理等に学び、また景樹秀鷹と交わり、一種の風を詠じたる人といわれ、大岡雲峰は旗本で四谷大番町(現大京町)に移住し、公郷に交友多く、 当図は衣冠の考証が正確であるといわれています。

御本殿内、格天井には、同じ雲峰の草花の図 が描かれています。これは天保十四年癸卯十一月冬至後吉日と記され、時歳八十の作であります。その他多くの当社の社宝は戦災に依って御社殿と共に焼失しました。

柿本人麿 かきのもとのひとまろ

ほのぼのと
明石の浦の朝霧に
島がくれ行く
舟をしぞ思ふ

紀貫之 きのつらゆき

むすぶ手の
雫に濁る山の井の
あかでも人に
別れぬるかな

凡河内躬恒 おおしこうちのみつね

住の江の
松を秋風吹くからに
こゑちそふる
おきつ白波

伊勢 いせ

みわの山
いかにまち見む年ふとも
たづぬる人も
あらじと思へば

大伴家持 おおとものやかもち

まきもくの
ひばらもいまだくもらねば
小松が原に
あは雪ぞふる

山部赤人 やまのべのあかひと

わかの浦に
潮満ち来れば潟を無み
葦辺をさして
鶴なきわたる

在原業平 ありわらのなりひら

月やあらぬ
春やむかしの春ならぬ
わが身ひとつは
もとの身にして

僧正遍昭 そうじょうへんじょう

いその神
ふるの山べの桜花
うゑけむ時を
しる人ぞなき

素性法師 そせいほうし

音にのみ
菊の白露夜はおきて
昼は思ひに
あへずけぬべし

紀友則 きのとものり

夕されば
蛍よりけにもゆれども
ひかり見ねばや
人のつれなき

猿丸太夫 さるまるだゆう

奥山に
もみぢふみわけ鳴く鹿の
声聞く時ぞ
秋はかなしき

小野小町 おののこまち

わびぬれば
身を浮草の根を絶えて
誘ふ水あらば
いなむとぞ思ふ

藤原兼輔 ふじわらのかねすけ

みじか夜の
ふけゆくままに高砂の
峰の松風
ふくかとぞきく

藤原高光 ふじわらのたかみつ

春すぎて
ちりはてにけり梅の花
ただかばかりぞ
枝にのこれる

源公忠 みなもとのきんただ

とのもりの
とものみやつこ心あらば
この春ばかり
あさぎよめすな

壬生忠岑 みぶのただみね

はるたつと
いふばかりにや三吉野の
山もかすみて
けさは見ゆらん

齋宮女御 さいぐうのにょご

袖にさへ
秋のゆふべはしられけり
きえしあさぢが
露をかけつつ

大中臣頼基 おおなかとみのよりもと

子日する
野べに小松をひきつれて
かへる山ぢに
鴬ぞなく

藤原敏行 ふじわらのとしゆき

あきはぎの
花さきにけり高砂の
をのへのしかは
今やなくらん

源重之 みなもとのしげゆき

なつかり(初雁)の
たまえのあしをふみしだき
むれゐるとりの
たつそらそなき

源宗于 みなもとのむねゆき

山里は
冬ぞさびしさまさりける
人目も草も
かれぬと思へば

源信明 みなもとのさねあきら

ほのぼのと
有明の月の影に
紅葉吹きおろす
山おろしの風

藤原朝忠 ふじわらのあさただ

よろづ世の
始めとけふをいのりおきて
今行末は
神ぞしるらん

藤原敦忠 ふじわらのあつただ

いせの海
ちひろのはまにひろふとも
今は何てふ
かひかあるべき

藤原清正 ふじわらのきよただ

天つ風
ふけひの浦にゐるたづの
などか雲居に
かへらざるべき

源順 みなもとのしたがう

水のおもに
てる月浪をかぞふれば
こよひぞ秋の
もなかなりけり

藤原興風 ふじわらのおきかぜ

契りけむ
心ぞつらきたなばたの
年にひとたび
あふはあふかは

清原元輔 きよはらのもとすけ

契りきな
かたみに袖をしぼりつつ
すゑのまつ山
なみこさじとは

坂上是則 さかのうえのこれのり

みよしのの
山の白雪つもるらし
ふるさとさむく
なりまさるなり

藤原元真 ふじわらのもとざね

咲きにけり
わがやま里のうの花は
かきねにきえぬ
雪と見るまで

小大君 こだいのきみ

大井河
そま山かぜのさむけきに
岩うつ波を
雪がとぞみる

藤原仲文 ふじわらのなかふみ

おもひしる
人にみせばやよもすがら
わがとこなつに
おきゐたるつゆ

大中臣能宣 おおなかとみのよしのぶ

みかきもり
ゑじのたくひのよるはもえ
ひるはきえつつ
ものをこそおもへ

壬生忠見 みぶのただみ

こひすてふ
わが名はまだき立ちにけり
人しれずこそ
思ひそめしか

平兼盛 たいらのかねもり

しのぶれど
色にいでにけりわが恋は
物や思ふと
人のとふまで

中務 なかつかさ

秋風の
吹くにつけてもとはぬかな
萩の葉ならば
音はしてまし